Front Issue
WORKS by
Yuta Oteki
THE SLICK
高感度なヘアカラー&デザインで、お客様のみならず、
全国の美容師からも圧倒的な支持を得ている樗木佑太さん。
そんな樗木さんが今、表現したいLOOKとはーー。
Photo: Syuya Aoki(W) text:PREPPY



SPECIAL INTERVIEW
――今回のLOOKについてお聞かせください。
「まず業界誌での撮影をやるうえで、自分自身が意識しているポイントはあまりヘアだけに目がいかないように、モデルやファッション、あとはカメラマンによる撮り方(フィルムで撮影するなど)を含め、そのなかでバランスを取ろうと思ってヘアスタイルをつくり、撮影しました。フィルムで撮影してもらったカットも多かったのですが、自分としては何か〈人の目に留まる〉ような、何かその作品を見ただけで〈やりたいこと〉が伝わるほうがいいと思ったので、今回はあえてフィルムの質感や色の見え方にはこだわりました」

――今回のカラーは黒髪×グリーンのデザインカラーでした。
「今回のグリーンは毛先に入れている部分もあれば、髪の間に入れている部分もあるんですけど、そういうのを含めて何かちょっとキレイにしすぎないというか、少し違和感が残るぐらいのデザインというのを意識しました。モデルさんは、今回の撮影を一緒にしてみたいと思ってお願いした方がたまたま黒髪ベースだったので、あのバランスだから逆にちょっと目に留まる……みたいな感じでグリーンを入れて。カットラインとカラーの入れ方で強さも出しつつ、ファッションを含めてトータルになじませる意識でデザインをつくりました。衣装に関しても全部僕が決め、自分の私物で撮影しました。ちょっとストリートなテイストを入れつつ、トップスは暖色系のポイントも入っているものだったので、デザインカラーでハマるのは寒色のグリーンだなと思ってチョイスしました。
ひとつのビジュアルをつくるうえで、やっぱりディレクションは全部自分がやるべきだなと思っているので、ふだんからファッションやヘアに関するものはとんでもなくインプットするようにしています。なので、撮影が来たから『何やろう?』ではなくて、やりたいものがいくつもあって、撮影が来たらその中から『何をやろうか?』っていうことを選ぶので、作品に対してのアイディアのバリエーションに関してはあまり困らないですね」
――外部撮影やセミナー、サロンワークでお忙しいと思いますが、仕事をされるうえで大事にされていることはありますか?
「僕の中ではやっぱりサロンワークはいちばん大事にしています。外部の仕事としてセミナーのお話をいただくこともありますが、月2本だけしかやらないと決めています。もちろん美容師のみなさんそれぞれに考え方のベクトルがあると思うのですが、僕自身はやっぱり人の髪を自分自身がきれいにしたいという思いも強いですし、何よりも自分がうまくなりたいという思いが強いので、どうしても〈教える〉というほうが多くなってしまうと、たぶん自分の成長とか、やっていることの繰り返しの感じとかに違和感を覚えてしまうと思うので……。自分として(外部のお仕事を)やらせていただく部分と自分自身が本当にやりたいことっていうバランスはブレないようにしています」
――この6月に新サロンがオープンされるとのことですが……。
「『THE SLICK』というサロンをスタートさせます。何よりも大事にしているのはスタッフです。スタイリスト6名、アシスタント6名で始めるのですが、スタッフそれぞれがカラーだけに特化するのではなくて、みんなが各々いろんな表現をして自立した中で、そういう人たちが同じ空間を共有している……というサロンにできたら、と考えています。みんなで似たものを提供したり、似た空気感で何かを発信する、というのも大事だというのは過去に経験しているんですが、これからはもうちょっと本当の意味で〈自由〉でいいのでは、と思っています。それはやはり各々が自立するっていうことにもつながると思いますし、何かに〈偏る〉というのが難しいなと思ったんです。なんかもうサロンの空間だけがあって、そこに各々表現したいものを、スタッフみんなが持っているうえで、そこは〈アウトプットする場所〉という感じがいいのかな、と。自分のことを分析して、自分は何が好きかとか、何がしたいのかっていうことだけちゃんと考えてほしいし、それに関してはしっかりサロンとして応援して、やることに対してのクオリティーだけ求める……そんなサロンにしたいと考えています。自由にスペシャリストがいろいろなことを表現するサロンとして、いずれ日本を飛び越えたいという思いもあるので、サロン名の『THE SLICK』もイギリス人と一緒に考えたんですけど、日本だけの響きとか呼びやすさだけではなくて、この意味が世界に行ったときにもすっと通じる、そういうサロン名にできたと思います。
最近、海外でも仕事をさせていただくようになって。やっぱり〈海外はスケールが大きいな〉と実感しています。僕も日本のことをすべて知っているわけではないですけど、日本でも、海外でもいろんなことを知らないと、自分の将来とか何に向かっていくのか……とかそういうイメージがつきにくい。僕自身いろんなことを経験させてもらって、日本にとどまらず、自分が向かう先っていうものを決めないと、とは思っています。知らないなかで決めても、スケールが小さくなってしまう気がするので。
だからこそ最近思うのは、いろんなものに振り回されないで、まず〈自分のことに集中したほうがいいな〉ということ。〈しっかり自分の仕事に集中しないと、世の中にはもっとすごい人はめちゃくちゃいる〉と感じることが多いんです。〈知らない〉ということは将来損をすると思うので、まずは自分のことに集中し、いろんなことを経験できるようにして、自分の中でいろんなイメージを持ってキャリアを積んでいくことが大事だな、と思っています」